ゴッドハンド不要論「ゴッドハンドは要らない。」

マスコミが特定の鍼灸師・施術者をいまだに「ゴッドハンド」のような派手な立ち位置で持ち上げ紹介する記事を書くことがあるので注意喚起したいと思う。結論から言うとゴッドハンドは誰のためにもならないし害悪ですらあるので一般の人に変な情報を広げないでいただきたいし、そこに治療者が乗っかることもぜひやめていただきたいとも思っている。社会全体がゴッドハンドを軽蔑するような流れになってほしいと思っている。しかし、同時に絶対になくならないとも思っている。理由は以下に書く。

ゴッドハンドは存在するのかもしれないし、存在しないのかもしれない。そもそも実態や定義がよくわからない。もしもゴッドハンドが存在するならばそれを証明するためにデータを細かくとって効果を証明したり、症例報告を出して学会発表すればいいと思う。自分の特別な技術が証明、再現できればたくさんの人の役に立つし、ビジネスとしてもとてつもない利益を上げることができるだろう。だが、そのようなことをした人は過去に見たことがない。なぜかデータや再現性は無視されていることがほとんどである。現在の科学で証明できないことがあるのは当たり前なのだが「信じるか信じないか」のベクトルだけだと宗教になってしまうし医学からは遠いファンタジーとなってしまう。ゴッドハンドの最大の問題点であり彼らの共通点は以下である。

1、「自分のやっていることをブラックボックス化しすごそうに見せている点」

2、それにより収益やプラセボ効果を最大化しようとしている点。

これだけ聞いたらよい部分もあるんだから放っておけばいいじゃないか、と思うのだが様々なデメリットがあるので順に書いていく。

1、ブラックボックス化しているために情報が不明瞭。連携ができないし外部医療機関を頼りずらい。それゆえ失敗やミスもあるがそれは明らかにされないことが多い。

2、医療の常識が無視されがちで優位性が不明確。サイエンスではなく有名人との関係性をアピールしたりし個人情報の取り扱いも無視されがち。現代医学否定やほか医療の否定につながりやすくカルト化しやすい。

3、ゴッドハンドの構図は情報商材や情弱ビジネスとよく似ている。嘘はついていないが誇張があるし説明責任から逃げることで利益を得ている。医療じゃないにもかかわらず医療のような雰囲気を出しているため被害にあう人がいる。

それでもゴッドハンドを求める人はいなくならないし絶対になくならないだろうし、これは代替医療そのものの問題でもあるかもしれない。人は必ず何かに期待せずにはいられないし、何かにすがらずにはおれない。現代医学がすべての問題を解決できないし、全部の不信感を払うことはできない。仕方ないのかもしれないが、だからこそ我々はノーというべきである。現在はあらゆる分野で科学化、標準化、情報化が進んでいる。まだまだ分からないことも多い一方、科学で明らかになったことも増えている。情報化が進む中明らかにしない意味がないのではないか。研究者の方は「医療情報との向き合い方」などを発信しているし*1、厚生労働省も情報をなるべく多く公開し、どのように補完代替医療やサプリメントと付き合うべきか?考えるため、情報公開を懸命に行っている*2。ゴッドハンドはブラックボックス化することで手に入る一つの利権であり、これを排除し情報公開していく姿勢を見せない限りその業界に未来はないだろう。社会から取り残される一方である。

また、もしも自分が医療者の一人でいたいならばその観点からもゴッドハンドを目指すのではなく、標準化を目指すべきなのである。すごいことよりも当たり前のことが当たり前にできるようになる方が良い。医療というのはインフラであり水道やガスと変わらないものだと思うがもしもそのインフラがブラックボックス化していたらどうだろうか?この水道から出る水はすごくおいしいかもしれないしもしかしたらまずいかもしれないし、さらに言えば毒かもしれないし何が入っているかわからない、という状態だ。「そんなものを水道から流さないでほしい」と思うのが普通の感覚ではないだろうか?ゴッドハンドは標準化できないものであり、見世物であり、詐欺師的でもあり、実は迷惑で恥ずかしい存在であることも、もっと世の中の人が知った方が良いと思う。

私は医療者のひとりでありたいと思う。だからまずは医療者の常識を身に着け、世の中と対話することをしたい。まじめな医療者や介護者は研究職などを除き表に出てこないがカルテを記録し、こつこつ症例をまとめ、今日も地道に誰かの役に立っている。自分自身もその一人になりたいし、それらの人に恥じることのないような仕事をしていければと良いと強く願う。

参考

*1、大野智「健康・医療情報の見極め方・向き合い方」大修館書店など

*2、厚生労働省・情報発信サイト「eJIM」

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする