カルテの書き方については残念ながら鍼灸学校では教わりませんでした。自己流でなんとなくやっておりましたが「(医療機関への紹介など)人に伝えるとき」、「ある種の防御策として(例えば保険請求している場合不正を疑われないようにするなど)記録として残すとき」、「(学会発表など)学びに生かそうとするとき」それぞれ必要なポイントや気にする個所が違うので自己流ではやはり問題が生じます。学べば学ぶほど「今までのは何だったのだ・・・」と反省するわけです。医師向けのノウハウ本で学んだことが素晴らしく、感動したので今後に生かすためにまとめていきます。まずはこの基本を学び、その後、東洋医学的な効率の良い鍼灸師のためのカルテの記載も考えてまいりたいと思います。
<良いカルテを上書くで大切なポイント>
1、By probrem
プロブレムリストを作る。プロブレムごとに分解して記載する。
2、SOAP
患者からの情報(Subject dateとObject date)、担当医師の判断(Assessment)、具体的な介入方法(Plan)に分けてこの順番で記載する。*重要なので詳細は後述
3、Chronological
とくにSの情報に関してChronological=時系列を意識して記載する。
4、Pertinent
診断や方針に影響する重要(Pertinent)な情報をしっかり記載。意味のあることを書く。
5、Real time
すぐに書く。時間をかけて立派にするよりも簡潔に。
<カルテの書き方を学ぶとどんなメリットがあるか?>
1、業務効率の改善:
型どおりに書けばよいので考えなくても良くなる。(SOAP形式のSOは特に重要。)研究データを後日まとめるときにも便利。
2、診断推論能力の習得:
診断推論の論理的思考パターンに沿って記載するため毎日カルテをつければ自然と診断能力が向上。プレゼンテーションや指導にも生きてくる。
3、多職種連携に生きる:
患者やコメディカルが読んでも現状や今後の方針が理解できるため関係者全員が主体的にかかわれるようになる(SOAP形式のPが特に重要)
4、トラブルが減る:
訴訟や不利益の予防。
<SOAPについての詳細1>
S(Subject date)とO(Object date)について
S:過去から現在に至るまでの患者や家族、前医などの「他人」を通して収集した「間接的に得られた情報」。家族や患者本人の証言、前医の手紙やカルテ、お薬手帳に記載された情報。
・導入
・現病歴
・既往歴
・その他(家族歴・生活歴の情報など)
O:現時点で医師自身や同僚・医療スタッフなどが入手した直接観察による所見。診察時の身体所見と検査所見。
・身体所見
・検査所見
1、さらに詳しく「導入」について
(1)Opening statement
年齢・性別・背景・主訴の4つで全体を要約
(2)主訴
今回の主題を明確に。医学用語(共通言語)に置き換えること。
(3)受診理由・入院目的
医師側の視点で今回の診療目的を明記。★特に本人が問題意識を感じていない場合や、本人と周囲の問題意識が異なる場合に特に重要。
2、さらに詳しく「現病歴」について
(4)経過
診断上もっとも価値の高い「時間経過」を明確に。患者に起きた順番に。
(5)症状解析
キーとなる症状の特性を「痛みのOPQRST」などで詳述。
「痛みのOPQRST」とは?
Onset 発症様式
Palliative/Provocative 増悪・寛解因子
Quallity/Quantitty 症状の性質
Region/Radiation 場所・拡散
Severity 強さ
Time course 時間経過
(6)Review of systems
頭のてっぺんからつま先まで鑑別にかかわる臓器系に絞って記載。
(7)ナラティブ
か・き・か・えなどで詳述。
「か・き・か・え」とは?
か(解釈)今の状況や症状病状をどのように理解してるか?いわゆる解釈モデル
き(期待)今後自分がどういう状態になりたいか?医師に何を望むか?
か(感情)今回の症状でどのような気持ちになっているか?
え(影響)今回の症状があると日常生活にどのような影響が出ているか?
3、さらに詳しく「既往歴」について
生まれてから現在に至るまでにすでに確定してる疾患の情報を網羅します。数が多い場合は臓器別に整理したほうが見やすい。
(8)併存症
今も活動がある疾患。病状や治療内容。かかりつけ医など。
(9)既往歴
過去に発症し治癒した疾患。後遺症の有無。輸血歴やアレルギー歴、出産歴など。
(10)治療内容
内服歴・手術歴・生活習慣・社会歴(仕事や交友関係など)
4、さらに詳しく「その他」について
(11)家族歴
同居家族、重要人物(介護上のキーパーソン・濃厚接触者など)必要に応じて。
(12)生活歴
嗜好品・生活習慣・社会歴(仕事や交友関係)
5、さらに詳しく「身体所見」について
(13)全身状態
(14)バイタルサイン
(15)全身診察
6、さらに詳しく「検査所見」について
(16)検体検査
(17)生理検査
心電図など
(18)画像検査
Xp→CTなど
具体的な記録の残し方の例(鍼灸院向け)
施術者氏名:カルテ番号
白石健二郎 1
年齢
50代
性別
助成
S(Subject):主観情報
主訴:首の痛み・不眠
既往歴:糖尿病
アレルギー:あり・卵アレルギー
手術歴:なし
出産:
家族歴:父 母 子
現病歴:(医師による診断名)頸椎椎間板症 X年、10/20 O整形外科で診断
発症様式・内容・経過:X年10月15日起床時に首が痛いことに気がつく、可動域制限あり、目まいあり それ以前も首が重い感じがした
服薬:西洋薬 ロキソンニン頓服(O整形外科)
O(Object):客観的情報
初診日:X年11月1日
所見(脈・舌・バイタル・硬結・圧痛点・腫脹・可動域制限の有無など):
A(Assesment):評価
中医学的評価(肝気鬱滞など)、VAS法、スパーリングテストなど
P(Plan):計画
治療計画や指導について、取穴部位、治療時間や方法、得気の有無、深さ、頻度、手技の方法、運動や生活指導方法など
*経過