介護分野(著者はケアマネージャー)での医療連携についての本を読みました、。勉強になった個所などピックアップしまとめて感想を述べます。
1、なぜ医療との連携が必要なのか?
介護保険法には、「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができる」(介護保険法第1条)と記されており、「医療との連携に十分配慮して行わなければならない」(同法第2条第2項)と医療と介護の連携について明文化されています。運営基準第13条でも、医療との連携の必要性が定められています。また要介護状態の高齢者は皆何かしらの疾病を持っているためすべて医療ニーズを抱えているといえます。
ケアマネージャーも把握すべき利用者の情報として以下のようなことが挙げられていました。
・ 既往歴
・ 現在治療中の病気(状態や症状)
・ 治療内容および受信している診療科
・ 服用中の薬の作用・副作用など
他に命にかかわるような病気では告知の有無、予後の経過等も。ケアマネージャーは医療ニーズを分析しつつ処方した薬が正しく飲まれているか?また副作用などが出ていないかもチェックし必要な場合は医療職に伝えフィードバックを受けることで医療ニーズを適切に把握することが出来ます。
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連携することでQOLの向上に役立てる。また医療の知識を高めることで利用者に介護が必要になった原因や疾病、傷害を把握し、病状の予測やリスク軽減・回避ができ、より満足度の高いケアプランが作成できる。(いまの状態に至った経過を知ることができる)
2、高齢者の生理的特徴など
高齢者とはWHOの定義では65歳以上の総称とされていますが65歳と95歳の高齢者では心身機能や活動状況、生きてきた時代背景も異なります。それらを踏まえたうえで生理的機能の特徴をまとめていきます。
(1)運動器系の変化
関節の変形や全身の筋委縮が起こり身長が低くなります。骨密度低下により骨粗しょう症になりやすくなります。そのため骨折や関節炎、変形性の関節症などが起こりやすくなります。
(2)循環器系の変化
血を増やす機能が低下し赤血球が少なくなり酸素が全身に十分に運ばれなくなり疲労感や倦怠感が起こりやすくなります。血管の動脈硬化が進み血圧が高くなります。リンパ系の免疫機能も低下し感染症にかかりやすくなります。
(3)呼吸器系の変化
岳交換機能が低下し息切れしやすくなります。肺機能の低下から上・下気道炎や肺炎など感染症にかかりやすくなります。嚥下機能低下による誤嚥由来の肺炎も起こりやすくなります。
(4)消化器系の変化
歯の欠損や歯肉の委縮などにより租借機能が低下します。遺産や唾液の減少、胃壁の運動野鳥の蠕動運動低下により、消化不良や便秘・下痢が起こりやすくなります。
(5)泌尿器系の変化
腎機能の低下から尿のろ過機能が低下し、多尿や頻尿になりやすくなります。また膀胱の筋肉量減少、収縮量の低下によって排尿障害や尿道括約筋の筋力低下による失禁も起こりやすくなります。男性の場合前立腺肥大による排尿困難も起こりやすくなります。
(6)内分泌系の変化
一例ですが体温維持機能に変化が起こり肺炎を発症しても熱が出ないため発見が遅れることもあります。
(7)脳神経系の変化
脳神経の細胞は30歳を過ぎると少しづつ死滅を続け年を重ねると反射神経運動も低下していきます。高齢期になると脳の血流が少なくなるため認知機能が低下していきます。
(8)感覚器の変化
加齢に伴って平衡感覚が衰えたり転倒しやすくなります。白内障が起こりやすくなったり張力低下による老人性難聴なども起こりやすくなります。味覚や嗅覚も低下してきます。
(9)皮膚感覚の変化
発刊などの皮膚機能が低下するため完走しやすくなったりしわやたるみやシミが増えます。
3、鍼灸師として思うこと
2、に挙げられた高齢者の生理的特徴は鍼灸でサポートすることが可能なものがほとんどであります。すなわち高齢者に施術を行うということは、必然的に医療面はもちろん介護面の知識も備えておかなければならないと考えることもできます。「どのような治療を受けているのか?」という医療面の知識はもちろん「どのようなケアをしているのか?」介護面の知識があれば、カウンセリング時に聞けることも増えて、より信頼関係の構築につながったり、より良い鍼灸の施術が提供できるのではないでしょうか。また介護面の知識を備えておけば、ケアマネージャーさんに挨拶に行った際に質問できることも増え、介護者側の方々との信頼関係構築にもつながることが期待できます。